駆け落ち

33/35
前へ
/35ページ
次へ
だって、昔の写真とか見られたくない…… 特に集合写真なんて、めちゃくちゃ写りが悪いんだもの。 「何でですか? 見たいよ」 「だーめ!!」 「見たいって!!!」 「駄目ったら、だーめ!!!」 ……本棚の前、どっちも一歩も引かなくて押し問答。 だって、やっぱり見られたくないもの。 私がそう思っていたら、月が諦めたように本棚の前から離れて、敷いてある布団の上に寝転がった。 「まぁいいや。過去の写真より大事なのは今だもんね?」 その言葉に……ドキドキした。 確かにそうだけど、言葉にするのがおこがましいほどドキドキした。 「こっちにおいで?」 本棚の前から動けなくなってしまった私に、彼が手招きをする。 ……久しぶりの二人きりの時間。 そして、二人きりの夜。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

480人が本棚に入れています
本棚に追加