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そのまま助手席のドアを開けると、桜さんに腕を掴まれた。
そして反射的に振り向かされる。
桜さんの顔が瞬時に近づいてくるのが、その気配で分かった。
私は抵抗する事もなく、自然と瞼を下ろした。
そして数分の間、互いの唇が深く重なり桜さんが満足したように離れていった。
「優陽、逃げれると思うなよ?」
「大丈夫です。覚悟を決めましたから! 荷物をまとめときますね」
私が逃げたら、桜さんは月に何をするか分からない。
それなら我慢をするしかない。
私が犠牲になって、彼を守るしかないの……。
それからすぐに車から降りた私は、遠ざかっていくテールランプを暫く見つめていた。
視界から消え去ったところで、涙が溢れてくる……
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