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「……くっ……やだ、もう……」
さっき触れてきた痕を消すように、服の袖で何度も唇を拭った。
雨が刺すように髪の毛を叩いてくる。
ポタポタとそこから雫が落ち始める。
そのままアパートの階段を上った。
ヒールの音が、コツコツといっている。
階段もかなり濡れていて滑りそうになってしまう。
そして階段を上りきったところで、私は部屋の前に視線を送った。
その視線の先……
「っ!」
部屋の前に、人影があったのだ。
その瞬間、私の足はその人物目掛けて走り出していた。
全身がずぶ濡れで、ボストンバッグだけを手にしている彼……
「……なっ、……何してるのっ……っ」
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