第1話

6/6
前へ
/6ページ
次へ
ビリっ 彼女は… 彼女は、バッグから大事そうに取り出した手紙を自分の手で2つに破ったのだった。 「ちょっと友梨子何やってるの!!」 みどりが驚いて声を上げると、友梨子はみどりの方を向いてちょっとイタズラに笑った。 そして、真剣な表情に戻り俺の方をしっかりと見つめて あの子はこう言ったんだ。 「笹塚さん。 私は…私は笹塚さんのことが本当に大好きです。 テレビや雑誌の中のあなたしか知ることが出来ないのだけれど、 それでも、笹塚さんの真面目な所、何に対しても頑張っていている所とか…面白くって…笹塚さんの笑顔は本当に沢山の人を笑顔にしてくれて…素敵な友達も沢山いて好かれていて… 私の知っているあなたはほんの一部かもしれないし、もしかしたら作られた顔なのかもしれない だけど好きになってしまったんです」 一息ついて「ふふふっ」と恥ずかし気に笑うと、彼女は吹っ切れたようにさらさらと、だけど感情を込めて話し出した。 「ごめんなさい、こんな事言って でも今は無理でも、絶対に叶えてみせます。 あなたに見あう素敵な女性になってみせます。 そのために頑張ってるんです。 今私は大学生です。 必ず2年後に。 いち社会人としてあなたの前に立ってみせますから、 そしたらこの手紙、受け取ってもらえますか…?」 最後だけ少し不安そうな彼女。 俺は彼女から目をはなせなくなっていた。 少し間をおいて俺は小さく頷き 「いいよ 楽しみにしてる」 と、なんとかそう告げた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加