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ちょうど客入りが途切れて、店内は静かなピアノの旋律に包まれている。だけど私の耳には、どんなに滑らかなプロの技でも、その欠片すら入ってこない。
「遥ちゃん。わたしを目標にしてくれるのは、すごく嬉しいわ。遥ちゃんはとてもいい接客をしてるし、お客様も喜んでる」
すみれさんはカウンターの少し高めの椅子に腰掛けて、背もたれに片肘を置いた。
「遥ちゃんは、わたしみたいになりたい?」
うなずいた。そしてすみれさんの笑顔を、見た。
「ダメだよ。だって、わたしは、わたしのだもん」
「……え?」
よく、わからないよ。
「遥ちゃんがしてるのは"わたしの接客"。だからわたしみたいになっちゃ、ダメ」
すみれさんの笑顔は、泣きたくなるほど優しくて、素敵だった。
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