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しばらく聞き取れないようなごちゃごちゃな言語で喋り倒すと、突然私の方に見下すような視線を向けてきた。
「ここは、っく、バーだったじゃねぇかよぉっ!俺はここの常連だぞぉ!?」
「そうでしたか」
見下すような視線、というよりはもう、焦点が定まっていない。むわっと漂うアルコールの匂いに、不快な顔をしかけたけどなんとか口元をおさえる程度で堪える。
周りの客席を見れば、助けてくれそうなくらいに腕っ節がありそうなお客さんはいない。どちらかというと女性客の方が多いし、そもそも客数自体が少なかった。
そこにやっと、この状況を打破できる人物が戻ってきた。
「かなりアルコールがまわっていらっしゃるようですがお客様、一度座りなおしになったらいかがですか?」
やけに丁寧な言い回し、しかしそれを発したのは……毎日トンコツ入りのスープを混ぜ続けて付いた筋肉で覆われた"ような"太い腕と巨体の喫茶店のマス……店長。
その腕がお客様目掛けてのびていく。その強面の顔と鋭い眼光を見たお客さんは、身体を縮こめると「ひぃっ!?」と小さな悲鳴をあげ、店を飛び出していった。
殴られるとでも思ったのかもしれない。
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