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店長の顔を見上げる気分でもなくて、唇を尖らせたままうつむいてしまう。すると頭に店長の大きな手がのった。意外と重苦しくなくて、触れるか触れないかくらいの微妙な位置で止まっている。
「遥ちゃん。相談しようと思えばいつでも出来ると思ったからこそ、言えなかったんだよ」
「どういう意味ですか」
「それくらい君はここtimeにとって、必要な人だって事だよ」
「意味がわからないです」
低い声で呟く私に、店長は「ふふっ」と笑う。
「じゃあ相談なんだけどさ?バイトを雇いたいんだ、男の子なんだけど。どう?」
「……承諾」
ふゆさんみたいに答えてみた。そしたら店長はまた笑って「そう言ってくれるって分かってたけどね」なんて言いながら頭の上から手をどけた。
「は、遥さぁん!椅子拭くのってこれでいいですかぁ?」
夏海ちゃんが裏口のドアを開けて寒そうに震えていた。
今までこの店では私が一番下っ端だった。そんな事感じさせないような雰囲気だったけど。でも、これからは私が先輩になって教えていくんだ。
そんな決意が心の中で出来てきて、下っ端に胡坐をかいてきた自分にさよならをした。
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