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ちゃんと上着着て手袋しないと寒いでしょ、と言うと「だいじょぶっす」とだけ返って来た。その間にも雪かきは進んでいって、階段から敷地の中がすっかり歩きやすくなった。
「こんなもんでどうっすかね」
「完璧!さすが!」
そんな明らかに寒そうな格好で、よくこんな短時間で済ませたものだ。よいしょしてあげると彼はちょっと笑った。
「やった」
「ありがとうね。寒いからほら、早く部屋に入って暖かいのでも飲んでよ」
そう言いながら私も階段に向かって歩き出すと、彼はスコップを方に担いだまま動かない。
「どうしたの?」
「これからバイトなんで、ゆっくりは出来ないンすけど」
「そうなの?元旦なのに大変だねぇ」
「遥サンがオゴッてくれるなら、なんか飲みに行きません?」
「へ?」
その真意は、ただ単に部屋に暖かい飲み物がないという、それだけの事だった。それを知っているから、私はため息を白く吐き出して笑う。
「timeが開店したら、おいでよ。ゴチソウしてあげるから」
「ん。……遥サン、親にはちゃーんとレンラクしましょーね」
彼はそう言い捨てて部屋に戻っていった。
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