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「じゃあ電車なんで」と手を振る新野君の背中を、呼び止めた。
「ご両親にちゃんと挨拶するんだよ!」
「遥サンに言われたくないッス」
ごもっともだ。
「年賀状、出したもん」
「じゃあ、いいんじゃないッスか」
こんどこそ新野君はサクサクと雪を踏みながら行ってしまった。
「さて、私も行かなきゃ」
亜紀に新年の挨拶をしたらtimeに行って、仕事の前に店長にココアをいれてもらおう。
冷たくて、寒くて、寂しい……今の亜紀の姿を見たら、凍えてしまいそうな私の心を、大好きなtimeで、大好きなココアで、暖めてもらうんだ。
雪に埋まった階段をブーツのつま先で足場を作りながら、一歩一歩登っていく。亜紀がいた病院のように勝手知ったるとはいかなくて、きょろきょろと辺りを見回しながらやっとたどり着いた。
『おはよう、遥っ!ねぇねぇ、おもち食べたぁ?』
「おはよう、それと、明けましておめでとう、でしょ?」
思わず、笑みがこぼれる。
『ねぇ、おみやげはぁ?』
「イチゴ買ってきたよ」
カサコソと、ビニールの袋をあさる。
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