愛し愛されていたあの日々(1)

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これには、頭取の意向が強く働いたようです! 衣食住の心配のないムショ暮らしさせるよりも、シャバの厳しい荒波にさらされ、いかに衣食住を確保するのが大変かを学び直して欲しい!という想いが込められていたそうです 事件発覚の2日後に懲戒免職となった彼は、私の家にあった彼の全ての荷物を黙々とバッグに詰め、全く何も言わずに私の前から消え失せた 心とカラダが強い力で引き裂かれるような想いにうちひしがれ、食欲はもちろん、シャワーを浴びる気にもなれずに、枕とシーツを涙でびしょ濡れにする一夜を過ごした どうして!? どうして自分がこんなに…こんなに男運がないんだろう? どうして、自分ばかりこのようなつらい想いをしなきゃいけないの!? 2年後 六本木の交差点で、ホームレスが4tダンプに轢かれて、即死する事故が起きました そのホームレスが、彼でした 信用金庫を追われてからの、彼の惨状は容易に想像がつくが、登録型派遣にさえも見棄てられたようですね~! 彼の死亡のニュースを観ても、私は全く泣いたりしませんでした 自分でもびっくりするぐらい、彼の事はいつしかどうでも良く全く思い入れがなくなっていたのです 1年程の時間をかけて、失われていた信頼の回復に、みんな必死に頑張った 彼の急死から2ヶ月後に来店したのが宏樹でした 「もう彼氏なんて要らない!」と、強く決心したり、無理やり強がりを言ったりして、日増しにフラストレーションを強く募らせていった
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