1

2/12
前へ
/638ページ
次へ
中井由希(なかいゆき) 高校2年生 クラス替えがあって2ヶ月、新しいクラスにも慣れてきた。 6月始め。 梅雨入りしたようなどんよりした空模様だ。 雨が降ってきそうだな。 今日、傘持って来たっけか? 「由希!席替えだよ~! 荷物持って!」 後ろの席の中川莉子(なかがわりこ)から声をかけられた。 「あ、はいっ!」 慌てて返事をした由希だったが、何処へ移動すればよいのかわからない。 キョロキョロしていると1年の時も同じクラスだった高坂文枝(たかさかふみえ)にも声をかけられた。 「由希、こっちだよ。 窓際の後ろの方。」 2年生になるときにクラス替えがあり、新しいクラスになってほぼ2ヶ月が過ぎた。 そこで生徒達は席替えしてほしいと担任に頼んだのだった。 いつまでも周りが変わらないと新しい友達も出来ない。 というより、前の席に座っている奴らが後ろに行きたくてブーブー言い出したところが大きい。 しかし、席替えがくじ引きによって決められたため、またしても最前列だと嘆いている輩もいる。 そんな状態で全員新しい席を目指して動き出したので、教室の中はおもちゃ箱をひっくり返したような騒ぎになっていた。 先生いわく、名簿順に日直と班を決めているので、今回は班ごとに移動しなくてはならない。 「はぁ~!?」 疑問や不満の声があがったが、先生は文句があるなら一学期中は席替えをしないと言い出し、生徒達は渋々先生の指示に従ったという訳だった。 おまけに席は男子の列、女子の列と交互に座れと言いやがる。(失礼。) 班の中はどう座っても自由だからなどと、ニンマリしたが、それがますます席替えを混乱させていることには気づかない。
/638ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加