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「俺、方向一緒だから送って行くよ。」 長野が自転車置き場に来てからそう言った。 「え?近いし大丈夫だよ。」 由希は遠慮して断ったのだが、長野は大丈夫だからと言い、結局二人で自転車を引きながら歩き始めた。 「変なこと聞いてもいい?」 由希は長野に質問をしたが、聞きにくい内容で恥ずかしそうにしていた。 長野は不思議そうに由希を見たが、さっきの時田の話しだろうと思い何でも聞いて!と言った。 「長野くんは妙子のこと好きなんでしょう?」 長野は想像とは違ったことを聞かれ驚いた。 「うん、好きだよ。」 由希は少し考えてから口を開いた。 「長野くんは…あの…。」 「何?」 「妙子とキスしたいとか、妙子を抱きしめたいとか思うことある?」 長野はギョッとした。 すぐに返事が出来ない。 「あ、ゴメン、変なこと聞いちゃって。 無理に答えなくていいよ。」 由希が申し訳なさそうに付け加える。 長野は真面目な顔で口を開いた。 「う~ん、全く思わないとは言えないけど、小原さんは憧れの人っていう感じがして、そんなことを考えちゃいけないような気がしてくるんだよね。」 「ふ~ん。」 由希は長野が正直に誠実に答えてくれたのが解り、嬉しく思った。 恋はいろいろなんだね。 由希はそうつぶやくと真っ暗な空を仰ぎ見た。 今日は曇っているのか星が見えない。 夜の空気は秋になってきていることを感じさせる。 「ヘクチッ!」 由希がくしゃみをした。 長野が心配する。 由希は身体があまり丈夫ではなく風邪をひきやすいと、山下や妙子が言っていたのを思い出した。 「中井さん、大丈夫? 早く帰ろう?」 そこから二人で自転車に乗れば由希の家はすぐだった。
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