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「私に解ってほしくないって、どうして?」 今度は由希が時田に詰め寄った。 「長野くんは時田くんが悪い奴じゃないって、ずっと私に言ってた。 私だって、時田くんはいい人だと思ってたよ。 信頼してたのに。」 由希の言葉に時田がムッとして言葉を返す。 「信頼してたのに裏切られた。 いい人だと思ったのにそうじゃなかったんだろ? 別に中井にどう思われようと、どうでもいいんだよ。 関係ないだろ?」 「トッキー!」 長野が時田の言葉を止めようとしたが、時田は止めなかった。 「なんの関係もない女に俺の何を解ってもらえって言うんだ。 ナガッチ達はナガッチ達で仲良く楽しくやってりゃいいだろ。 俺がしたことは謝る。 悪かったと思ってる。 だけどそれ以上は関係ないんだから、ほっといてくれよ!」 時田は吐き捨てるように言うと長野を置いて走って行ってしまった。 由希は茫然としていた。 長野から聞いた話しもショックだったが、今日の時田の言葉はもっとショックだった。 いや、確かに関係ない自分が時田を理解する必要なんて無いのかもしれない。 しかし…。 「中井さん、ごめん。 また嫌な思いさせちゃったね。」 長野がシュンとしている。 「ううん、大丈夫だよ。 長野くん、気にしないで。 私は長野くんから話し聞かせてもらって良かったと思ってるから。 こっちこそ、ごめんね。 時田くんと長野くんがケンカすることじゃないのに…。」 由希の言葉に長野はホッとしたように頷いたが、時田の様子は心配でたまらないようだった。 由希も明るく気遣いのあるいつもの時田とは別人のような時田に動揺していた。 でも既に別人のような時田を何度か目の当たりにしている。 今の時田も時田なんだ。 ただそう受け止めるしかない。
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