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由希は面談の順番が莉子の次は橋沢だったなと思い出した。 ここで待っていれば橋沢が来るだろうか? 由希はそう思いながら、持ってきた資料を見始めた。 なんの資格もない自分が就職なんて出来るところがあるのかな? 思わず書類に見入っていると、後ろで小さくアッ?と声がした。 振り向くと橋沢が由希を見て立ち止まっている。 「どうしたの? 何か見える? 誰か待ってるの?」 橋沢も莉子のように由希の隣りに並んで窓の外を見た。 橋沢を待っていたとも言えず、資料を見てただけだと答えた。 橋沢は由希の手元をチラッと見て目を見開いた。 就職の資料だと解ったのだろう。 由希は恥ずかしそうに資料をまとめた。 橋沢はそれについては何も言わず、教室で見たら?と由希を促した。 相変わらず無口な橋沢だが、なんとなく連れ立って歩くような形になり、由希は気持ちがふんわりした。 橋沢の何が自分の心を震わせるのだろう? 由希にはよく解らない。 時田のことも解らない、橋沢のことも解らない、由希には解らないことだらけだ。 そう簡単に人を理解することなど出来やしないのだろう。 名前、生年月日、住所、血液型、身長、体重etc. 文字にして解るモノはその人のほんの一部でしかない。 文字には出来ない、数字には出来ない、たくさんの要素がその人を作っている。 自分のことだって解らないのに、人のことなんて解るわけがない。
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