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長野が由希のそばに来て小さな声でありがとう!と言った。 長野は由希が長野のために妙子を連れて来てくれたことを理解していた。 「長野くん、頑張ってね!」 妙子が長野に声をかけると、長野はとびきりの笑顔になってウン!と頷いた。 「ナガッチ、行くぞ!」 これからすぐに長野と時田のダブルスの試合が始まるようだ。 「時田くん、頑張って!」 由希が勇気を出して時田に声をかけた。 時田は驚いたような顔をしたが、おうっ!といつもの時田らしく笑顔で手を振ってコートに降りて行った。 「トッキー、ガンバー!」「ナガッチ、ファイト!」 部の仲間達も客席からとコートサイドで応援している。 由希はカメラを抱えて写真を撮りやすい位置に移動した。 前回見た時は相手が三年生で高い所からビシビシスマッシユを決められ負けてしまったが、今回は初戦一年が相手らしく、時田と長野が余裕で攻撃しているのが見てとれた。 軽やかなステップからスマッシユを次々と決めている。 おや、二人ともカッコいいではないか? 由希は目を見開いた。 これは長野が妙子によいアピールができそうかも?と、由希は思わず笑顔になった。 夢中でカメラを向けてシャッターを切る。 あっという間にひと試合が終了した。 「ふぅ」 由希は息をついて、文枝、 妙子、美由のいる席に戻った。 「長野くん、かっこ良かったね?」 と、妙子に言うと妙子も笑顔を輝かせウンウンと頷いた。 近くの山下がムムッという顔をしている。 一緒に試合を見に来れたのは良かったが、これで妙子の気持ちが長野に傾いたら困る!というのがしっかり顔に出ている。 隣りで佐川と省吾が苦笑いしている。
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