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金曜日の六限、クラスホームルームの時間だった。 「金曜日の終わりに席替えなんかしたら、月曜日に間違えて前の席に行ってしまいそうだよね。」 文枝が由希に向かって言った。 「そうだよね。 月曜日、心配だなぁ。」 由希も同意した。 「プッ!」 由希の隣りの時田が吹き出した。 スコーン! 「イテッ!」 莉子が時田の頭を筆入れで叩いた。 「何、笑ってんのよ!」 「イテェなあ! 莉子は乱暴すぎるんだよ!」 頭を抱えて時田が莉子に文句を言っている。 「どうせ由希ならいかにもやりそうだ!とか思ったんだろ! 失礼なんだよ!」 もう一度ポコンと筆入れで時田の頭を叩くとそう言った。 「え~!莉子、その一言が失礼だよ~?」 文枝が苦笑いしている。 由希はハハハ…と乾いた笑いでごまかした。 まだ2ヶ月しかたってないのに、みんな私がぼんやりさんだとわかってんのかしら? 橋沢と津田は聞いているのかいないのか、知らない顔をしている。 子供のケンカには付き合うつもりはないようだ。 「日直の組み合わせも隣同士だし、ちょうどいいよね?」 莉子はほいっと話しを変えた。 みんながウンウンと頷く。 2ヶ月経つうちに莉子がだいたい物事を決めてくれるのに慣れた。 残りの5人はあれこれ言うのは面倒くさいというヤツばかりで、これまた誠に都合がよいようだ。 たまに時田がチャチャをいれて莉子に筆入れで叩かれるのが、いつものパターンになりつつあった。 莉子と時田は中学から一年の時も同じクラスだったらしく、気心知れた仲のようだった。 莉子が親分、時田が子分だなと見ていた由希だったが、今となっては班のみんなが莉子の子分のようで可笑しいのだった。
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