第1話

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その時斉藤さんが、 「エリコ・・・・・」 と呟いたのが聞こえた。 思わずマルコと顔を見合せて微笑んだ。日本にいる恋人の名前だろうか。 と・・・・マルコが片岡さんの耳元に唇を寄せた。 『ちょ・・・・っと、マルコ』 止めようとした私を目で制して、マルコは、 『ワタル・・・・アイシテル』 と日本語で言った。 唇でもう!とマルコに抗議した私の耳に、 「ミオ・・・・・」 という、片岡さんの呟きが聞こえた。 思わずギクリと身体を固くした私たちは、黙ったまま片岡さんを見つめた。 彼はその綺麗な唇で、もう一度、 「澪・・・・・」 と、言った。
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