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その時斉藤さんが、
「エリコ・・・・・」
と呟いたのが聞こえた。
思わずマルコと顔を見合せて微笑んだ。日本にいる恋人の名前だろうか。
と・・・・マルコが片岡さんの耳元に唇を寄せた。
『ちょ・・・・っと、マルコ』
止めようとした私を目で制して、マルコは、
『ワタル・・・・アイシテル』
と日本語で言った。
唇でもう!とマルコに抗議した私の耳に、
「ミオ・・・・・」
という、片岡さんの呟きが聞こえた。
思わずギクリと身体を固くした私たちは、黙ったまま片岡さんを見つめた。
彼はその綺麗な唇で、もう一度、
「澪・・・・・」
と、言った。
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