第1話

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<航目線> 俺は動揺していた。 「今でも好きだ・・・・って顔に書いてあります」 そう彼女に言われて、情けないほど動揺していた。 認めてはいけないと思ったけれど、言葉を継げない俺はそれだけでもう、彼女に屈服していた。 「凪ちゃん・・・・・」 彼女は目にいっぱい涙をためて俺を見ていた。何故泣くんだろう。君が俺のために泣くことなんてないんだよ。 本当にひとつも。 俺は稲葉のこと、きちんと忘れようと思ってるんだ。俺は稲葉のこと、もう何とも思ってないんだ。 何を言っても見抜かれる気がしていた。そして何を言っても嘘のような気がしていた。 「おやすみなさい」 彼女はそう言って背中を向けた。俺は黙ってそれを見送った。 俺は大人で、彼女は子供だったはずじゃないか。今までも、これからもずっとだ。 だから俺たちの間の距離は縮まってはいけない。 そんな言い訳は通用しないけれど、愚かなことに今は、自分の心の揺れさえ止めることができなかった。 俺のどこが大人だ・・・・・。
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