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<凪目線>
ラーラのパーティが終わって5日後。
しばらく休みを取っていたマルコが出てきたので、閉店後の片付けをしながら、片岡さんの話を聞いてもらった。
『澪の正体は、やっぱりワタルの思い人だったわけね』
言いながらうんうんと頷くマルコ。
『昔の・・・・って言ってた。幸せになってほしいって。でもとても悲しそうな顔をしてた・・・・』
『・・・・・・・?』
『まるで、今でも好きなんだ・・・・って言われてる気がしたの』
マルコは、しようがないわねという風に首をゆらゆらと振った。
『ナギ・・・・いつの間にワタルのこと、そんなに好きになったの?』
『わからない・・・・そんなこと、わからないよ』
なんだか、また泣きそうだった。
『ナギは・・・・どうしたいの?』
『あんな、悲しそうな顔をしてほしくないの。何故彼があんなに悲しそうなのかわからないから。・・・・ねえマルコ。どうしたら私は、片岡さんを癒してあげられるの?』
マルコは私の頭をそっと撫でた。
『あんたって、ホントにいい子ね。私が男ならすぐ好きになるのに。・・・・ワタルって、何てわからず屋の、バカなのかしら』
それが何となくおかしくてくすっと笑うと、
『笑うとこじゃないの』
とマルコはその美しい眉をひそめた。
『怒らないでよ、マルコ。私はただ好きでいたいの。彼の心に住んでいるのが、たとえ澪さんでも』
そう言った私にマルコはますます怒った顔をした。
『ナギ、あんたは間違ってる。恋はもっと盲目的で、傲慢なものよ。ワタルの心が澪のものなら、それはナギが愛してあげる価値のない男ってことなのよ』
なんでマルコはこんなに怒るのだろうと思った。
『違うの。だって私が彼を勝手に好きなんだもの。彼は大人で、私なんか見てくれないってわかってる。それでも好きなの。彼をあの悲しみから・・・・救いたいの。それって・・・・やっぱり無理なこと?』
ほら、やっぱり泣いてしまった。と思ったらマルコの胸の中に抱きしめられていた。
『ナギ・・・・あんたって、ホントにいい子ね・・・・聞いてる?・・・・ワタル?!』
え?とマルコの胸から顔を上げて振り向くと、少し間があって、扉の陰からゆっくりと片岡さんが現れた。
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