大晦日

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ずずずと音を立てて蕎麦を啜る。 「うん、おいしいです」 おれは西さんに作ってくれた感謝も込めて言う。 「おいしいですね」 「天ぷらもうまい」 「うん、やっぱり天ぷら蕎麦っていいですね」 二人で蕎麦を食べ終わり、西さんは新しいお茶を用意してくれた。 「ありがとうございます」 壁に掛けてある時計を確認すると、すでに年越しまで残りわずかとなっていた。 「あ、もう今年が終わりますよ」 言うと、西さんも時計を確認して、 「ほんとだ。どうしましょう、今から神社行っても行く途中で年越しちゃいますね」 「ここで年越ししてから初詣行きます?」 「そうしましょうか」 おれらはそのままテレビを観ながら、テレビのカウントダウンと一緒に年越しをした。 「あけましておめでとうございます」 西さんが笑顔で言う。 「あけましておめでとうございます」 おれも同じように返す。 「じゃあ、今年の抱負をどうぞ」 おれが近くにあったリモコンをマイクのようにして西さんに聞く。 「えーっと、んー、じゃあ、健康に過ごすってことで」 「あはは、それ抱負っていうんですか」 「急に言われても思いつかなくて」 「あはは、じゃあ健康にいきましょう」 「では、続いて抱負をどうぞ」 西さんがおれの手からリモコンを取り、おれにあてがう。 「んーと、昇格する!」 「お、いいですね、かっこいいと思います」 「まあ、昇格よりもまず正社員にならなきゃなんですけどね」 「すぐなれますよ」 「なれますかね、はは」 おれらはお互いの仕事や休みの日に何しているかなんかを話し合い、そろそろ神社に行こうということになった。 「車で行きましょうか」 「お、いいんですか」 「その方が早いし、何より寒くないし」 おれらは西さんの車に乗り込み、ここら辺の地域で一番大きい神社へと向かった。
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