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車は西さんの家に到着した。
到着した時に思った。
もしこのままお酒を飲んだら、電車ももうないし、西さんの家に泊まることになってしまう。
「西さん、今更ですけど」
「はい?」
「もしお酒飲んだら、ぼくを泊めてくれますか?」
西さんははっとしたような顔をした。
「あ、そうか、お酒を飲んだら運転できないですね」
「すいません、ここまで来ておいて」
「いえ、ぼくは、大丈夫ですよ」
「いいんですか?」
「はい、あんな部屋でよければ」
「ありがとうございます!」
西さんは、そっか、飲んだら帰れないか、と小さくつぶやいていた。
「人を泊めるのって嫌じゃないですか?」
少し不安になって聞くと、
「あ、いえ、そういう意味じゃなくて、単にこうなることを気づかなかったんで。でもぼくは本当に大丈夫ですよ」
蕎麦を作ってもらい、車で送ってもらい、家にまで泊まるのはさすがに甘えすぎただろうか。
おれらは普段、店員とお客さんという関係なのだ。
不安が頭を過ったが、
「じゃあ今夜はたくさん飲みましょうね」
という西さんの言葉に安心した。
家に入り、西さんが熱燗の準備をしている間、おれは先にお風呂でさっぱりしててください、という西さんの言葉にまた甘えてお風呂を借りた。
「ぼくので良ければこの服着てください」
部屋着まで借りた。
西さん優しい。
「お先です」
お風呂からあがると、西さんも部屋着に着替えていた。
「西さんもどうぞ。ってぼくが勧めるのもおかしいですけど」
「じゃあぼくも入ってこようかな。あ、適当におつまみも作ったんで、よければつまんでてください」
「はーい」
西さんは風呂場へ消えていき、おれはテーブルに用意されていたお漬物やトマトをつまんで待つことにした。
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