大晦日

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しばらくして西さんが出てきた。 「お待たせです」 少し赤くなった頬をした西さんはそのまま台所へ行き、熱燗を持ってきた。 「じゃあ、乾杯ということで」 「乾杯」 初めて飲む熱燗は、なんというか、お酒だった。 喉にひっかかるというか、でもワインの感覚とは違って、不思議な喉ごしだった。 「どうです、おいしいですか?」 「んー、なんか、おいしいのかどうかすらわかんないです」 「あはは、最初はそういうものですよ」 そのままおれらは熱燗をちびちびと飲み進めた。 「ぼく、結構お酒弱いんですよね、実は」 2本目を空にしようかというときに、おれは言った。 「え、そうなんですか、結構飲んでますよね」 「そうなんです、実は弱いんです」 「そういえば顔が赤いなって思ってたんですけど、大丈夫ですか」 「たぶん大丈夫です」 西さんは立ち上がり、 「ちょっとお水持ってきますね」 といって台所からグラスに入ったお水を持ってきてくれた。 「すいません、西さん優しいですね」 お水を一気に飲み干すと、少しだけ胃が楽になった。 「先に言ってもらえていればこんなに勧めなかったのに」 「いやあ、せっかくの新年だし、お酒に強くなろうと思って」 「あはは、なんですかそれ、そんな簡単に強くなるわけないじゃないですか」 「ですよね」 西さんは心配するようにおれの顔を覗き込んだ。 「横になりますか?」 「うーん、少しだけ」 そういっておれは西さんにもたれるような格好になった。 「え」 西さんがおれを支える。 「んー、なんか、いい感じに酔いすぎてますね、ぼく」 そのままの格好でしばらくいると、 「あの」 目を瞑り、少し意識が遠くなりかけている頭に西さんの声が聞こえる。 西さんがおれの頭を撫でるのがわかった。 頭を撫でられるのなんて何年ぶりだろうと考える。 耳を触られる。 人に触られるのって気持ちいいなーとか考える。 手が頬に伸びてくる。 唇をなぞられる。 唇の隙間から、指が入ってくる。 んっと声を出すと、その指がびくっと反応するのがわかった。
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