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「あの、さっきはごめんなさい」
おれは言った。
「いろいろ考えたんですけど、ぼくにも悪い部分はあったなって思って」
「それって、つまり、罪滅ぼしですか」
「え」
「罪滅ぼしのために、一緒に寝ようっていったんですか」
「いや、そんなつもりは」
「ぼくは確かにいけないことをしました。ですけど、これって、罪滅ぼしですか、同情ですか」
西さんの言葉に返事ができなくなった。
「すいません、責めてしまって」
申し訳なさそうな声を聞いて、おれは自分の考えの浅はかさに自分が嫌になった。
「ごめんなさい、西さんを馬鹿にしているような、そんなつもりはなくて、ただ、西さんを傷つけてしまったのかもと思って」
言葉が出てこない。
どうしていいのかわからない。
「ぼくは、好きです。ずっと好きでした」
隣を向くと、西さんのまっすぐな視線と合わさった。
「ありがとうございます」
おれは、重ねた手に力を込めた。
「正直、まだぼくの中には戸惑いの部分が大きくて、どうしたらいいのかわからないっていうのが本音です。でも、嫌とか、そういうのはないんです。それを伝えたいです」
「本当ですか」
「はい」
「嫌じゃないんですか」
「はい」
「よかった」
安心したように、深く息を吐いてもう一度、
「よかった」
「西さん」
「はい」
「これから、どうなるのかとかわかんないですけど」
「はい」
「よろしくお願いしますね」
「はい」
言うと西さんは笑ってくれた。
おれも安心できて、頬が緩んだ。
「あの」
西さんが恥ずかしそうに言う。
「キスしていいですか」
おれも恥ずかしくなった。
「はい、いいですよ」
目を閉じると、優しく、でも確実に、唇が重なった。
「大好きです」
西さんが囁くように言う。
心が温かくなる。
長い間キスをした。
男の人とのキスは初めてだけど、
悪くない。
手を繋いで、キスをしながら、おれらは眠った。
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