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目が覚めて、隣を見ると西さんの寝顔が見えた。
カーテンの隙間から除く太陽の光がまぶしくて、サイドテーブルの時計を確認すると昼の1時を過ぎたころだった。
「おはようございます」
見ると、西さんがまだ眠そうに瞼をこすっていた。
「起きてたんですか」
「はい、少しまどろんでいました」
「もう昼ですね」
「そろそろ起きましょうか」
身体を起こし、西さんは暖房のスイッチを入れた。
布団の隙間に入り込んできた冷気が体温を奪っていく。
「寒いですね」
西さんはそう言ってまた布団にもぐりこんできた。
「寄っていいですか」
「ん?」
「その、身体をくっつけても、いいですか」
言われて、ああそういえば昨晩おれらは付き合うことになったんだよなって、一緒に寝ている状況を再確認した。
「いいですよ」
西さんは寝ているおれの身体に腕を回し、抱き枕を抱えるような形になった。
抱き枕となったおれはどうしたものかと考えて、空いている左腕を西さんに回し、同じように彼を包んだ。
「温かいです」
おれの首あたり、鎖骨にとどくかどうかの部分で西さんはつぶやいた。
確かに、人の体温というのは、温かい。
とても気持ち良い時間だった。
お互いの体温を感じながら抱き合う。
起きたはずの頭がまた眠りの中に引き戻されそうだ。
「夢みたい」
西さんがつぶやく。
おれは彼の頭を撫でて返す。
「夢の中にいるみたい。心地よいです」
しばらくそのままで過ごし、部屋が暖房で温かくなった頃、おれらは一緒に起きた。
居間で西さんの淹れてくれたコーヒーを啜る。
「明日から仕事始まるんですよね」
「はい、百貨店は2日から営業開始なんで」
時計を見るとすでに夕方の5時を回っていて、1日が過ぎるのがこんなに早いと感じたのは久しぶりだと思った。
「晩御飯、どうします」
西さんがキッチンから顔をのぞかせて聞いた。
そういえば今日はまだ何も胃に入れていなかったのだと気づく。
「どうしましょう」
「もし時間あれば、ぼく何か作りましょうか」
「え、でも」
「嫌ですか?」
「いえ、なんだか昨日から甘えっぱなしだなと思いまして」
「いいですよ、遠慮しないでください」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
西さんはキッチンに引っこみ、間もなくして冷蔵庫を開け閉めする音や、水の流れる音が聞こえ始めた。
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