大晦日

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24歳は、 会社でばりばり働いていて、 お金にも余裕があって、 海外旅行なんかも長期休暇の度に行ってて、 お酒の名前もたくさん知ってて、 行きつけのバーがあって、 気の合う仲間と金曜日の夜は盛り上がり、 土日は愛する人と一緒に過ごして、 そろそろ将来のこともしっかり考えなきゃなーみたいな、 そんな大人の男になってると思っていた幼きおれ。 どうしてだ? どうしてフリーターなの? どうして貯金ないの? どうしてお酒に弱いの? どうして土日も働いてるの? どうして恋人がいないの? おれ。 24歳。 フリーター。 (^u^) 今日もいつもと変わらない朝がやってくる。 築30年のアパートには野良猫が住みついていて、カーテンを開けると小さな庭で猫たちに餌を与えている推定年齢30代後半のおばちゃんの笑顔が見えた。 うん。 今日も良い日が始まる予感。 髭剃って歯磨きして顔洗って、今日は何を着て出勤しようかクローゼットの中を覗く。 アパレルで働くおれのクローゼットにはありとあらゆる服が押し込められていて、そろそろ整理しなくてはと思い続けて3年目。 アパレルといってもおれの働いているのは百貨店で、スーツ半分、カジュアル服半分という具合の店で、そのため着用服はスーツかジャケパンに限られてくる。 この時期、つまり年末は基本的にお客様は来ない。来てもお正月のセールの下見か、どうしても買わなくてはいけない理由のある人だけだ。 そのためこの時期は毎年見た目よりも動きやすさを重視して服を選ぶ。 セールの準備、つまり値下げ商品の確認や、そこに何パーセントオフかのタグを付けたり、他の店舗や本部の商品センターから届く大量の商品を並べたり、そういったことをしやすい恰好がいい。 淡いブルーのシャツに濃紺のニットを重ね、グリーンのチノパンを穿く。そこにグレーのジャケットを合わせることにして、さらにグレーのブーツで整える。 通勤用のダウンとマフラーを身体にまとわりつけて、さ、今日も元気にお仕事ばんざい。
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