大晦日

4/18
前へ
/18ページ
次へ
お店に戻って掃除やら昨日からの引き継ぎやらの開店準備を済ませ、おれは言われたとおりに裏でのセール準備作業に入った。 ビニールに入っているスーツにひたすらセールシールを貼っていく。 ぺたぺたと。 隣を見ると大量のアウター類やインナー類も山積みだ。 ひたすら貼っていく。 こういう単純作業は無心になれる。 ただシールを貼る作業。 商品番号を確認して、値下げ率を確認して、シールを貼る。 20%OFFシール 30%OFFシール 40%OFFシール 貼って 貼って 貼り続ける。 アパレルって案外地味な作業が多いということに、働き始めてから気が付いた。 外から見ていたころは、いつもニコニコしていて、きらびやかで、おしゃれで、かっこいいって思っていた。 でも、 実際の現場は意外と難しい。 毎日の売り上げ 顧客様へのサービス 百貨店特有の、外商というもの 幅広い商品知識も必要だし スーツはむしろ専門知識がかなり必要な商品だ そこに加えて商品の店間移動だったり 百貨店の人たちからの要望だったり 中から見ると、百貨店のアパレルスタッフというのは、 意外と地味だ。 世間一般からして百貨店というのはイオンなどで扱っている衣料品よりも高価なものを扱っているというイメージがある。 そしてそれは間違っていない。 そのため、販売員にもそれ相応のサービスが要求される。 気の回し方というか、 お客様一人一人にどれだけ濃いサービスができるかというか。 顧客様の顔と名前は覚えるのは当然だし、いつ何を買ったかまで記憶しておかなくてはならない。 おれ、最初は大学在学中にここにアルバイトとして入って、 気が付けばそのままフルタイムの形でここに留まっている。 24歳は、思っていた以上に、大人じゃない。 お金もなかなか貯まらないし、休みも不定期だし、、、
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加