大晦日

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西さんは町工場のようなメーカーに勤務しているらしい。 メーカー勤務といっても営業で外回りが主らしく、夏は暑いし冬は寒いし、小さな会社だからなかなか営業が取れなくて大変だって話を聞いたことがある。 「西さんこそ、ぼくと一緒に初詣行くより、お付き合いされてる方とかと行ったほうがいいんじゃないですか」 おれはタバコに火を点けながら聞く。 「ぼくもこの年で独り身ですよ。実家に帰っても、親や親せきから毎年のように結婚はまだかって催促されるだけなんで、今年は帰省しないことにしたんです」 「そうだったんですか、同じですね」 西さんは少し恥ずかしそうな顔をしながら、 「好きな人はいるんですけど、なかなか思いを伝えることができなくて」 と口ごもった。 「お、片思いってやつですか」 少し茶化すと、 「この年でそんな甘いものとか、そういう感じじゃないですけどね」 右手で額を覆うようにしながら照れる西さん。 その後おれらは少し話し、結果、31日の大晦日、おれが仕事終わってから一緒に年越ししてそのまま近くの神社に初詣にいこうということになった。 年越し蕎麦も食べたいな。 「じゃあ31日、仕事が終わったら連絡しますね」 「はい、待っています」 店頭に戻るとすでに他のスタッフたちが出勤していた。 「おはよーございまーす」 アルバイトの男の子が眠そうに言う。 「眠そうな声出すな、起きろ」 店長が突っ込む。 「引き継ぎして、休憩でようか」 副店長の永森さんが近くに来て言った。今までお茶していたが、おれはバイトの男の子に引継ぎしてそのまま副店長と一緒に休憩に出ることになった。
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