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予想外の提案だったけど、このまま外で待つよりも、西さんがそう言ってくれるのであればお言葉に甘えよう。
「じゃあ、蕎麦買いにいきましょか」
おれらはそのまま近くのスーパーで蕎麦と天ぷらを買い込み、西さんの家に向かうことになった。
西さんの家までは結構近くて、20分も歩かないくらいで着いた。
「駅からけっこう近いところに住んでるんですね」
西さんの住むマンションを見上げて言うと、
「仕事柄電車使うことが多くて、それなら駅の近くに引っ越しちゃえと思いまして」
「じゃあさっそく作りますね」
家に入ると居間に通され、西さんは台所へ消えていった。
「あ、お茶かコーヒーどっちがいいです?」
「お茶で」
しばらくして西さんが急須と湯呑を持ってやってきた。
「お茶かコーヒーって聞きましたけど、よく考えたら今からお蕎麦食べるのに、コーヒーなんて飲むわけないですよね」
少し笑いながら西さんが言う。
「ですよね、ぼくもそれ聞かれた時、そう思いました」
笑って返すと、
「じゃあ聞いたときに言ってくださいよ」
「すいません、西さんはコーヒー飲みたいのかと思って」
持ってきてもらってお茶は玄米茶で、香ばしい匂いと温かさが身体いっぱいに広がった。
「適当に寛いでてください。リモコンとか雑誌とか、そこらへんにあるもの自由に使ってもらって構わないんで」
「はーい」
テレビを点けると毎年年末恒例のお笑い番組がやっていた。
しばらく笑いながら番組を見ていると、
「できましたよー」
西さんがお蕎麦を持ってきてくれた。温かい湯気が立っている。
「待ってましたー」
「はいどうぞー」
お蕎麦を覗くと汁の匂いが鼻をかすめ、海老やかき揚げなどの黄色が目に飛び込んできた。
「おいしそう」
「では、今年もお疲れ様でした」
西さんが箸を持ち、いただきますのポーズをしながら言う。
「今年もお疲れ様でした!」
「じゃ、いただきます」
「いただきます!」
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