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暗い路地裏に足音が響く。
そこは足元に等間隔に照明が施されてはいるものの相当暗い。
狭い路地裏は高い壁に挟まれて、割れた空から街の灯りが微かに差し込んでいる。
細身の少年が入り組んだ狭い路地裏を縫うように進む。
足音は狭い壁にこだまして、高い空に届く前に高い壁に飲み込まれる。
黙々と歩く。
まるで迷わせる為に作ったかのような道を。
少年が立ち止まる。
「今着きました。」
「はい、大丈夫です。」
「えぇ、開けて下さい。」
空を割っていた片方の壁のタイルがスライドし、人一人通れる位の隙間を作る。
そこには地下へ伸びる階段。この灯りではせいぜい2、3が見えて後は闇に消える。
迷わず少年はその闇に飛び込んで行った。
タイルが元の位置に静かに戻り、夜空を割った狭い路地を静寂が、隠す様に包み込んだ。
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