1・5

1/1
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ

1・5

  暗い路地裏に足音が響く。     そこは足元に等間隔に照明が施されてはいるものの相当暗い。   狭い路地裏は高い壁に挟まれて、割れた空から街の灯りが微かに差し込んでいる。         細身の少年が入り組んだ狭い路地裏を縫うように進む。     足音は狭い壁にこだまして、高い空に届く前に高い壁に飲み込まれる。     黙々と歩く。 まるで迷わせる為に作ったかのような道を。           少年が立ち止まる。         「今着きました。」   「はい、大丈夫です。」   「えぇ、開けて下さい。」       空を割っていた片方の壁のタイルがスライドし、人一人通れる位の隙間を作る。 そこには地下へ伸びる階段。この灯りではせいぜい2、3が見えて後は闇に消える。   迷わず少年はその闇に飛び込んで行った。             タイルが元の位置に静かに戻り、夜空を割った狭い路地を静寂が、隠す様に包み込んだ。        
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!