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少女、珠華が建物からでると外は真っ白だった。
「雪が降ってたのか…」
呟きは雪の中に消える。
ここに来た時は、まだ降っていなかった。
どれほどの時間が経ったのだろうか。
それ程かかっていないはず。
早く帰って、報告を済まさなければならない。
「珠華!!」
後ろから声をかけられ振り向くと、さっき部屋に来た女性がいた。
「夜那(ヤナ)…終わったのか。」
「ええ。帰りましょう。」
夜那は歩き出したが、すぐに止まった。
「だめね…やっぱり迎えに来てもらいましょう。」
彼女は珠華の体を見て言った。
ポケットから携帯をだして、電話する。
「あ、もしもし夜那です。終わったので迎えに…場所?だから山中村の…」
珠華は自分の体を見る。
着ている服は赤く染まっている。
歩いてきた道にも赤い雫が点々と落ちている。
ましろの地に朱の雫。
それは自分のしてきたことを表していた。
耳を澄ます。
とても静かで、誰もいない、自分の存在すら感じられないぐらい。
雪が音をすっている。
自分の穢れを消してくれそうな白い世界
本当に、そんな世界にいられればいいのに―
「…と…珠華…!」
夜那の声で意識が現実へと引き戻される。
「何?」
「来たわよ。迎え。」
少し遠くを見ると黒い車が止まっていた。
「着替えは、我慢して。
いつもの車じゃ目立ちすぎるから。」
「大丈夫。」
そして2人は車に乗り、家へと向かったのだ。
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