いつもと同じ

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辺りに充満している鉄のような匂い。 そこには一人の少女と男がいる。 しかし男の四肢は力なく放り出されている。 その男を少女は只見つめる。 その表情(カオ)は何の気持ちも写していない。 ガタッ 音のする方は部屋の扉の辺りで、立ち竦んでいる若い男がいた。 男の目に映ったのは、実に凄惨な光景だった。 部屋の壁にもたれ掛かり、四肢を放り出している男。 部屋中に飛び散っているあかいもの。 その朱の中央に立つ少女。 彼女の手には鈍く輝く日本刀が握られている。 その様は凄惨だが、男は彼女に目を奪われた。 男は我に帰る。 その誰もを魅了にする美貌。 それが男のこの状況の予想を確信に変えた。
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