靄(モヤ)

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「…もし…もし?」 その一言を喉の奥から必死で絞り出した。 少し間を置いて聞こえてきた声は、何だかとても懐かしく感じた。 『…ゆい?…元気にしてる? ゆい、あの時はごめん。本当に、ごめんね。 あの時、僕、どうかしてたんだ。ゆいに怖い思いをさせたこと、ずっと後悔してた。 ねえ、ゆい。 あの時、怖い思いをさせただけで終わっちゃったけど、本当はちゃんと伝えたかったんだ。 僕、ずっとゆいが好きだった。 この先、もし、ゆいが僕を許してくれる時がきたら、また、俺のこと"ヨウちゃん"って、呼んでくれる? そんな日が来るかわからないけど。 僕、またアメリカに戻るんだ。…逃げるみたいだけど、そうじゃないんだ。またやりたいこと見つけたし。 ねえ、ゆい。 ゆいの幸せに笑って"おめでとう"を言えるような男になるから、幸せになるんだよ。…アイツに…幸せにしてもらうんだよ。 ゆい。 …バイバイ。』 部長と繋ぐ手に力がこもる。 涙が溢れて、相槌さえもほとんど打てなかった。
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