靄(モヤ)

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結局、顔見知りには会わずに、お店に着いた。 お店の前で部長が一度私と目を合わせてからそっと手を離した。 時間には十分間に合ったはずなのに、お店の中は既に盛り上がりムードだった。 「…すごい。既に盛り上がってますね。」 「ああ、そうだな。」 今日のこのお店のオーナーが営業の若園さんの知り合いらしく、貸し切りにしてもらっていると聞いていた。 「ゆいー!!」 「お疲れっす。」 奥から美咲と成瀬さんが出てきた。 お店は洋風で、カウンターもあればテーブル席もあって、テーブルにはもうお料理がたくさん並んでいた。 森田部長が乾杯の音頭をとって、みんなで高々にグラスを掲げてぶつけ合った。 一つの目標に一丸となって向かい、それが達成された同じ高揚感をみんなで感じる。 仕事仲間だから出来ること。 部署が違うのに、ここに呼んでもらえたことが今更ながらとても光栄なことのように思えた。
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