零日目

2/6
前へ
/36ページ
次へ
幼い少女は暗い道を歩いていた。いつの間にか親ともはぐれ、一人泣きながら歩いていた。 「お母様……グスッ」 この山の奥に、自分の家があることを、少女は知っている。実際に少女も何度も通っている道だ。なのにいつまで経ってもたどり着けない。 「お父様……グスッ」 そうして泣きじゃくりながら、変わらない景色を少女は恐怖に侵されながら懸命に歩き続ける。 「どこぉ?……グスッ」 だがとうとう少女は疲れて座り込んでしまった。こうなるともう一歩も歩けない。辺りに灯りはなく、なんの音もせず、そこがまるで死んでいる世界だとでも言うようだった。 「ねえ君」 そんな少女に、突如誰かが話しかける。中学生くらいの少年だった。 「一人なのかい?」 少女は頷く。 「そうか。お家は?」 「あっち」 そう言って少女は前方の闇を指差す。 「立てる?ボクが連れて行ってあげるよ」 そう言って少年は少女の手を取り、歩き始めた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加