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幼い少女は暗い道を歩いていた。いつの間にか親ともはぐれ、一人泣きながら歩いていた。
「お母様……グスッ」
この山の奥に、自分の家があることを、少女は知っている。実際に少女も何度も通っている道だ。なのにいつまで経ってもたどり着けない。
「お父様……グスッ」
そうして泣きじゃくりながら、変わらない景色を少女は恐怖に侵されながら懸命に歩き続ける。
「どこぉ?……グスッ」
だがとうとう少女は疲れて座り込んでしまった。こうなるともう一歩も歩けない。辺りに灯りはなく、なんの音もせず、そこがまるで死んでいる世界だとでも言うようだった。
「ねえ君」
そんな少女に、突如誰かが話しかける。中学生くらいの少年だった。
「一人なのかい?」
少女は頷く。
「そうか。お家は?」
「あっち」
そう言って少女は前方の闇を指差す。
「立てる?ボクが連れて行ってあげるよ」
そう言って少年は少女の手を取り、歩き始めた。
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