第1話

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 私は足元に落ちているネジに気付き、それを拾い上げた。ここは、P博士の研究所。私は、ここで、P博士の助手をしている者だ。  機械工学に詳しいP博士の研究所にネジがある。それぐらいなら、大したことはない。大事なのは、ネジが落ちていたことだ。しかも、高額の資金を投じて購入したスーパーコンピューターが置かれている部屋に。研究室でもない部屋にネジが落ちているなど。私は始め、何かの部品かと思い近くのコンピューターを覗き見てみたが、どのコンピューターも欠けている部品はなかった。それに、よくよくネジを観察すると色も材質もここのコンピューターとは違っていた。  それでは、通気口のかと思い脚立を持ってきて室内の空調を管理しているファンのネジを調べてみた。だが、部屋のファンは全てネジで固定されており欠落しているのはない。私は首をかしげて、部屋を出る。扉を開けて、廊下に出ると丁度、この研究所で働く全自動掃除ロボットで出くわした。これでも、P博士の開発したモノの一つだ。炊飯器のような形で一般家庭に普及している掃除ロボットとは一線を引いた別のモノであるが、ゴミが出やすい研究所ではその大きさが丁度よかった。私は鉢合わせた掃除ロボットに道を譲り先に行かせた。ただ、掃除をするだけのロボット。ゴミが落ちれば、即回収する優れものであるが扉の開け閉めなどはできない。P博士の場合、それを見越してよほど、スーパーコンピューターを設置してある部屋のようによほど、重要な部屋でない限りは扉は全自動で開くようになっていた。ネジが掃除ロボットに回収されなかったのも、そのおかげだろう。  話を戻すが今、大事なのはネジである。どこのネジか分からないのが落ちていたのが問題だった。P博士に聞けば、どこのネジなのか、何に使用するネジなのか、すぐに分かるのだが、生憎、P博士は友人と昼食をとる為に外出していた。気になるとはいえたかが、ネジ一本の為にP博士を呼び出すのも忍びなかった。
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