第1話

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 ネジのことを考えながら私は研究室に戻りつつ、どこのネジであるのか無意識に探していた。だけど、これと同じネジを見つけ出すのは容易ではない。常備ある設備に加え、ほぼ毎日のようにP博士は発明を続けている。ネジの類など、その過程で幾らでも出てきた。既存の部品で間に合わない時、特注で部品を造らせるほどだ。たった一本のネジがどこのモノなのか、簡単に見つけられるだろうか。  私はそんなことをあれこれ考えている中、あることを思い出した。それは、P博士が最近、完成したといっていた新しいロボットことだ。どんなモノなのか、まだ私は見せてもらっていないが、かなり高性能なロボットだそうだ。もしかしたら、このネジはそのロボットに使用されていたモノなのかもしれない。まだ出来たばかりなので、それが何かの弾みで外れ落ちてしまった。たった一本のネジなので、全体に支障をきたすことはないので、P博士も見落としていたのかもしれない。  しかし、何のネジなのか。予想を立てたところで、私にはどうすることもできない。何せ、出来たばかりの高性能ロボットだ。スーパーコンピューターと同じようにに厳重に管理されているのは十分、予想することができた。私にはまだ、そこに立ち入る権限がないし、どこの部屋にしまってあるのかさえ分からない。結局、ネジを元に戻すことはできないということだ。仕方がない。大人しく、受付にでも座ってP博士が帰ってくるのを待つことにしよう。その時、このネジがどこに使うネジであるのか、聞けばいい。一応、念のために他のロボットも調べておくが。  私はP博士から与えられた仕事をこなしつつ、入れる範囲でどこのネジなのかを探したが、結局、見つけるのには至らず、私は受付に戻りP博士が帰ってくるのを待った。  二時頃になってP博士は研究所に戻ってきた。 「すまんな。友人との昼食で話しがすっかり盛り上がってしまった」  予定の時刻を大きく過ぎて帰ってきたP博士は申し訳なさそうにいった。P博士が私と違って時間通りに動けないのは前からのこと。慌てるほどではなかった。  
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