幻想怪物-ユメ ケモノ-

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城の壁と同じ暗く塞ぎ込んだ紫色の空間一面に雑然と知識が詰み込まれた少し小さな部屋、まるで頭の中に浮かぶ脳の記憶を司る大脳皮質を再現したかのような部屋の窓からは青空以外は何も見えない。 「壁のせいかな…ちょっと暗いね、もう少し明るくすべきだったかい?まぁいいや、どうせあたし以外誰も来ないしね。」 宙に浮かぶ城の脳の中、本に目を落とす一人の魔法使いが呟いた。その魔法使い、カメックは小さいとはいえこの図書館の本すべてを網羅する司書であり、この部屋に並ぶ本は全てカメックの物である。 そんなカメックだけの空間の中に一匹の蝙蝠が入り込んだ。刺々しいシルエットに禍々しい紫の容姿、この城を作るにあたって大いに貢献したものというべきか、今回の計画でクッパの相棒となっている蝙蝠の魔物、アックームである。 昔マクラノ島を恐怖に陥れ、当時の王子であるユメップの手によって夢世界へと封印された彼をクッパが解放したのが事の始まりである。 「カメックハ ヨク ホンヲ ヨンデイルガ モノガタリ スキナノカ?」 「嫌いじゃないけど主に読んでるのは魔道書、これで魔力を鍛えるの。ファイアブロスが炎の特訓してるのと同じ。」 そういうとカメックは自分の手の上にいくつかの円状と三角状二つの図形の魔法を浮かべた。 「魔道書の内容を理解し、自分の魔法の欠落を見つけ、そして本の力を借りて穴埋めをする。」 カメックが魔道書を開き、そしてそのページの内一つの項目に目線を滑らせると、手の上にある二つの形の魔法に、その魔道書の受け売りである四角の魔法が加わり、新たなカメックの魔法としてそれらは手の上にゆっくりと浮いている。
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