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だからアックームはカメックの周りを回る本の真意を探る意味を込めて、おかしいと言ってみたのだ。
「おかしくなんかないさ。本当に確証を持つにはほかの何にも頼らない、自分の目で見聞きすること、じゃあ遠い世界や過ぎ去った過去をどうやって見聞きするって言うんだい?本しかないじゃない。だから実際、特に歴史なんてものは人が声に出していえばどんな嘘も事実になり、逆にどんな事実も黙っていれば無かった事になるんだよ。」
「ソウカ…」
カメックはどうやら前者だと思っていたようだ。アックームはそれが滑稽だとも哀れだとも取れたのだが、それ以上にカメックの、あるいはカメックが発したその言葉の何かが恐ろしく、それ以上追求することはしなかった。
「ソノハナシ…ベツノ シテンカラノ ハナシトイウモノニ キョウミハナイカ?」
「そうだねぇ、せっかくご本人様が話してくれるというなら…聞き流してあげてもいいかもね。せっかく現れたもう一つの角度なんだし。
ただしあまり煩く話すようならすぐにでも叩き出すよ。」
そう言ったカメックは一冊本を手に取ると即座にその世界へと目を落とした。本当に聞き流すつもりなのか、実際に聞いているのか、知己の仲であるならまだしも昨日今日知り合ったアックームにその真相など到底分かるはずもない。しかしそれでも彼はその拙い語りで話を始めた。
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