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悪夢には様々なものが含まれていた。恐怖に関する知識、様々な言葉と意味、それを発する手段など。
それを取り込んでいった蝙蝠はいつしか知識を覚え、そしてぎこちないながら言葉も覚え始めた。
しかしそれは同時に美味に牙を持つ毒でもあった。小さな蝙蝠だった彼は悪夢に出てきた魔物を具現化したような凶悪な姿となり、悪夢で覚えた知識は人々を恐怖に陥れるもの、行動すべてが悪に埋め尽くされた蝙蝠の素行は全て悪事の限りを尽くすものとなってしまっていた。いつしかその蝙蝠にはアックームと名前が付き、マクラノ族の癌として皆から攻撃目標にされ始めた。
それでも既に甘美な毒はアックームの体を染め上げ、欲望の赴くまま、悪夢をその身に取り込んでいた。
彼が悪夢の虜になると、それに応じるように悪夢の力も溢れ出る。それはすでに普通のマクラノ族が気付いてもおかしくない域にまで達していた。しかし悪夢の甘美に捕り憑かれ、狂ったようにそれを貪り続けるアックームによって皮肉にもマクラノ島の均衡は保たれていたのだ。
アックームは悪夢からの知識をつけるうちに知能が上がり、分かり始めたこともある。それはもはや風前の灯となった当初の目的、自分を醜い怪物に変えてしまった全ての動機、増え始めた悪夢の根源について、それは悪夢を司るダークストーンにあった。
皆がドリームストーンの力を借り、良い夢をと願ったところ、ドリームストーンの力は増長し、それに影響されたダークストーンもまた力を増していった。ドリームストーンの良い夢はマクラノ族の糧となり、そしてともに増長した悪夢は行き場を失い、世界に悪夢の力が蔓延し始めたのだ。そしてそれに毒されたアックームが現れ人々はせめて夢の中では良いものをと更なる夢を求め、それに比例するかの如くダークストーンの放つ悪夢も邪悪なものとなっていき、そしてその邪悪さは全てアックームの糧となってしまったのだ。
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