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その日、私と部長で私のアパートを後にする頃にはもう夕飯時。
「…久しぶりに、行ってみるか。」
部長に言われて連れて行かれたのは、そう、春に連れて来てもらったラーメンの屋台だった。
前と同じ駐車場に停めて、屋台に向かい、屋台の赤いちょうちんが見えると部長が笑った。
「涼しくなったからやってると思ったんだ。」
暑さの厳しい真夏はやっていないらしい。
私はここのラーメンの味を思い出しながら暖簾(ノレン)をくぐった。
「へい、らっしゃい!」
おじさんの元気は健在らしい。
「こんにちは。」
私が挨拶すると、おじさんは手を止めて、部長と私を交互に見た。
「…兄ちゃん、ご無沙汰だな。あれっきり来ないから、てっきりこの姉ちゃんに愛想つかされたと思ってたよ。…前に来た時より、グッといい雰囲気じゃねえか。」
おじさんの手が動き始める。
部長は笑いながら注文した。
「ラーメン2つ。」
「あいよ。」
おじさんの声は耳にも胸の中にも心地よく響く。
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