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化物(魔法叔父さん)のせいで、俺の一張羅である白いダボついたシャツと、ダボついた黒のズボンは泥だらけになっている。
家もなくなるし、服もこんなだし、本当人間って最低だよ。
俺が一体何をしたというんだよ。
ただ……お腹を壊していただけじゃないか……
「世間は厳しいよ……ママン……」
顔も分からない母親に向けて嘆いた俺は、物陰に身を隠しつつ再びギルドを探し始めた。
どうやら魔法叔父さんは街からいなくなったようで、俺に悪夢だけを残したそれに怯えながらも、何とか冒険者ギルドを発見する。
正方形を模した白亜の建物は、ガラス扉から覗くと多くの人々で賑わっていた。
「よし。魔法叔父さんはいないな……」
ごくり、と生唾を飲み込んで、俺はこそこそと受付に向かう。
「いらっしゃいませ。ご登録ですか?」
「あ、はい。お金が欲しいです」
「そうですか。では、こちらにお名前と戦歴があればご記入下さい」
手渡された用紙に名前を書き、ついで戦歴を書こうとした。
しかし、思い当たる節がまるでない。
俺は何と戦って、何を得たんだろう――なんて、ちょっと格好つけていると受付のお姉さんが「素人ですか」と、あからさまに残念そうな顔をした。
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