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そこは閉ざされた長方形の空間だった。
目前には青色に塗られた壁。
というか、四方を囲んでいる青い壁。
「紙が……無い……だと!?」
ここは魔王城の一階奥に位置する従業員専用トイレである。
俺は先日食べた魔獣、”テララビット”の丸焼きが見事にあたり、トイレにてひきこもり生活を送っていた。
「すいませーん。誰かいませんかー?」
下半身丸出しの状態で叫んでみるが、悲しいほどに反響した自分の声しか聞こえなかった。
困った。実に困った。
申し遅れたが、俺は”ガイル・ディラン”。
一応は魔王軍において裏ボス的な存在をやっている。
表上は魔王様――なんて敬っているが、正直にいえば俺の方が強いので見下していたりする。
今は腹を下しているけどな。
誰がうまいこといえと……
『誰かいるのか!?』
そんな一人ノリツッコミをしていると、トイレの入り口から透き通るイケメンボイスが聞こえてきた。
やべ……もしかして勇者じゃね?
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