ホームレス魔王誕生

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 竜の巣からは拭き返しの風が轟々と吹いていて、俺は靡く髪を片手で押さえながら、先輩へ向け口を開いた。 「先輩! 竜の巣です!」 「分かってるよ」 「父さんの言ったとおりだ……向こうは風が逆に吹いている……!」 「父さん? 何を言ってるんだ?」 「いくよ! ゴッツさん!」 「先輩とおよびっ! って、もういいか?」 「あ、はい。自分満足ッス」  そんなやり取りを経て竜の巣に近づくと、高さ15メートルはあろうかという大穴が開いていた。  茶褐色の壁に異様な雰囲気で広がる漆黒の空間に、堪らず俺はココアアイスへ手を伸ばした。 「じゃあ、中へ行ってくる。命綱をここで持っといて、暫く待機していてくれ」 「立っておくだけでいいんですか? モシャモシャ」 「何かあれば糸から魔力を流して報せる。そん時は助けを呼ぶか、逃げるかしてくれ」 「ういっす。自分心配ッス。 モシャモシャ」 「全くそうは見えないが、まあいい。行ってくる」  先輩は溜息を残して竜の巣へ一歩を踏み出した。 「そう。それが先輩の最後の台詞だった……」 「おい。勝手に変な設定を作るな」 「あ、聞こえてたんすね。すいません」  今度こそ本当に先輩が中へ消えた後、俺は適当に壁に背をあずけてしゃがみこみ、ぼんやりと空を見上げながら帰りをまつこととなった。
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