4:Confused fight

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「はぁっ……はっ……っ!」 もつれる足を、それでもどうにか前に進ませようと必死だった。 少女はただ、走り続ける……―― 王都の空に現れた巨大な飛空艇を駆る何者かが“中立軍”を名乗った後、城下町はパニックに陥っていた。外にいた者は訝しげに顔を見合わせ、屋内にいた者たちもまた何事かと窓や玄関口から顔を出す。そして空を見上げてぎょっと目を見開くのだ。 一様にざわつく人々も気にすることなく、“中立軍”と名乗った何者かはただ一方的に宣言する。それは良く響く声で、悪意が全く感じられない無邪気さを滲ませていた。 『とはいえ、創りたての寄せ集めだから圧倒的人手不足なのよね。だから協力してくれる人を募集するために、てっとり早くこうして乗り込んでみたワケ』 その言葉に一般市民と、城から逃げ出した王女を探していた兵士たちとが目に見えて動揺した。 こんなにも堂々として大雑把な勧誘など、聞いたことも見たこともなかった。 それにも構わず、声は力強く続ける。 『戦う力なんかなくたっていいから! ただ、馬鹿な戦争に付き合ってらんない人とか、なんか変えたい人とか! そんなのでいいからっ! 戦うのはあたしとかその他大勢がするからっ!』 人手不足、と言った口で何をのたまうかと思った者もいた。しかしそんなことは口に出しはしなかった。 姿は見えないし、その声だけで若い女の者だと誰もが推測出来た。普通ならばそんな者に自分の命など預けられるはずもない。だがそれでも……抗い難いような魅力が、力が、その声には込められていた。 『あたしらについてくるっていう変人は声を上げてっ!』 そう言ったきり声は聞こえなくなり、人々と兵士たちは飛空艇をじっと見つめるだけしかできなくなって……やがて、飛空艇から幾つかの影が飛び降りた。 低い位置に停空しているとはいえ、どう見積もっても地上からは五百や六百メートルはある高さからの飛び降りである。見ていた人々の間にはハチの巣をつついたような悲鳴と混乱の波が広まっていった。
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