第1話

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「いきなりだけどさ」 「ん?」 「殺し合おう」 「んー。…は?」 強い橙色の西日に染められた川沿いの小高い道に、二人の高校生らしき男女がいた。 二人とも会話もなくつまらなそうに、ずっと前を歩く老人の連れている大型犬や、遠くの山々を眺めながら歩いていた。 しかし少年は少女の急な発言に驚き、目を見開いて足を止めた。 少女は変わらないつまらなそうな顔で少年のほうを振り向いた。 少年は訊いた。 「マジで言ってる?」 「大マジ。さあ早くその腰に差した刀を抜いて命の奪い合いしようぜ。私の中の殺人狂はアップを済ませてる模様だぜ」 少女は平板な口調で言い、左手首を右手で押さえ、何度か捻ってみせる。 そして手を開いたり閉じたりする。 まるで今からその手で誰かを殴ろうとでもしているかのように。 そんな芝居がかった動作を見て、少年は少女が冗談を言っているのだろうと悟った。 「ねーよ。帯刀してる高校生なんているかよ」 呆れ顔で少年は少女の横を通り過ぎようとした。 その瞬間、少年は目の端で銀色の光を捉えた。 すれ違い様の一撃だった。
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