第1話

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宮地も緑間の体に凭れたまま離れようとしなかった。 また初めのような沈黙が続きどちらも口を開こうとしない。 2人が口を開かないうちに時間がどんどん過ぎていった。 すると、しばらくして緑間がこの沈黙を破り口を開いた。 「宮地さん…もうすぐ、朝練ですよ…」 もうすぐと言っても本来の朝練の時間よりは早い。でも、スタメンのメンバーは他の部員より早くに来て練習を始めている。 言っている間に高尾達も来るだろう。 だから、早く行かないと皆に不思議に思われてしまう。 だが、それでも宮地は動かないし口も開かない。 そんな調子の宮地に緑間は完全に困却していた。 このままでは、朝練に遅れてしまう。 だが、宮地を無理矢理に離す事もできない。 「宮地さん、遅れてしまいますから…」 そう言って少し宮地の肩を押してみた。 だけど、宮地は動こうとせず代わりにボソッと小さな声で何か呟いた。 緑間にはその何かが聞こえず聞き返してみるも宮地は答えようとしない。 「教えてくださいよ…」 「しつけぇな、轢くぞ」 緑間はなんとか宮地に言わせたくなってきた。 とりあえず、さっきと同じようにしたらいける気がして宮地の肩を押す。 でも、やっぱり宮地は動かない。 「朝練だから早くどいてくださ…」 「あと、5分だけこれでいろじゃないとパイナップル投げるぞ…」 そう言って宮地は緑間の胸に顔を埋める。 恥ずいな、くそ…とかブツブツ言いながら耳まで真っ赤にする宮地を見て緑間の頬が緩む。 その時、ふと顔を上げた宮地が緑間を睨み付ける。笑うんじゃねぇ轢くぞ!!と言って緑間の頬を思い切りつねる。 痛そうにしながらもどこか嬉しそうにしている緑間が不意に宮地の手首を掴み宮地の唇に自分の唇を重ねた。 チュッというリップ音と共に宮地の顔が先程よりも真っ赤になり緑間は思わず声を出して笑いだす。 笑う緑間を宮地は怒って睨み付けるも緑間は笑うのを止めない。 宮地は怒りながらも「たまにはこんな朝も悪くないな」と思った。 緑間はと言うと「高尾に先に行くこと伝えていなかったのだよ…」と今更気付いた。 「まぁ、高尾だから良いか…」 「あ゛?何か言ったか?」 「何も言ってないのだよ」 その頃、緑間宅前… 「真ちゃんせっかくチャリアカーで迎えに来たのにいないってどういうことよ… 俺1人でこれとか恥ずかしすぎるだろ…」 END
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