モノクロのマドンナ

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彼女を初めて見たのは、入社式だった。 新入社員代表の挨拶を務めるのは、意外にも女性社員。 女でも何でもいいから手早く終わってくれと、最初は何の興味もなかった。 どうせとんでもない堅物女か、 鼻につくやり手の女だろうと。 そう思ったのに、壇上に上がった彼女は、それと全く違っていた。 上品で柔らかな雰囲気。 華奢な長身の綺麗な立ち姿。 遠目でも優しげな顔立ちが見てとれた。 『おー、キレーじゃね?あの子』 後ろの奴等のヒソヒソ話が妙に勘に障った。 周りの雑音に内心苛つきながら、彼女のスピーチに耳を傾けた。 外見通りの落ち着いた声。 聡明さと強さを感じさせる、簡潔なスピーチ。 一気に場内の空気が引き締まる。 上手い、と率直に思った。 成瀬紗衣。 入社して最初に記憶した名前だ。
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