モノクロのマドンナ

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出世頭と噂される彼女の印象は、 世間のキャリアウーマンとはまるで違う。 色白の肌。 くるんと巻かれた柔らかそうな髪。 優しげな下がり気味の大きな瞳。 ずば抜けた顔立ちではないのに、 彼女が纏う空気はとても綺麗だ。 花みたいだ。 彼女を見る度に思う。 匂いのきつい派手な花でなくて、 野の花みたいな。 女に対してそんな風に思うのは初めてで。 柄でもない自分のメルヘン発想に少し笑えた。 同期の男達にも陰でマドンナと遠巻きに崇められていた彼女。 でも、経営企画室という特別なエリート部署にいる彼女とは、ほとんど誰も接点を持てなかった。 それに彼女については、もう既にどこかのエリートと婚約中だとか、真偽不明な様々な噂があった。 彼女はどんな男を選ぶんだろう。 手の届かない、ごく遠い存在に対する漠然とした思いは、会社生活に馴染み慌しく過ごすうちに、次第に意識から薄れていった。
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