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戦国時代が大好きで、全ての基準が戦国時代の戦国脳……リサ・ゴンザレス。そんな歴女たるリサが異世界にやってきて早くも一ヶ月以上が経っていた訳だが……。
「……お風呂入りたい」
そんなリサの開口一番がこれである。
「良く考えたらあたしこの世界に来てまだ一回しかお風呂入ってないじゃん……」
ここはリサの執務室。そのデスクで――真剣な眼差しで何をほざくかと思えば風呂の話である。
「あーっ! お風呂入りたいっ! お風呂入りたいっ! ゆったりまったりしたいっ!」
デスクで両手をジタバタさせ、大きな駄々っ子と化すリサ。それを見兼ねたか――
「お館様。そうは仰られましても我が家の経済事情では……」
と。変態金髪美人巨乳メイド長のイザベラが声を掛けた。
これにリサは素早く右手をかざし。
「わかってる。わかってるけど毎日毎日水浴み水浴み……まあ、たまにお湯だけど――だけどそれだけじゃあ疲れがとれないのよ。湯船に浸かりたいのよっ!」
「は、はぁ……お気持ちは良くわかりますが……」
溜息交じりにイザベラが述べれば、リサはかざしていた右手で拳を作り。
「戦国時代。どんな大大名でも湯船になんてたま~にしか入れなかった……」
ボタン一つで水を張り湯を沸かす現代とは違い、当時は全てが人力である。更には水自体もそれなりに貴重な時代なのでこれは当然である。
「戦国時代にだっておもてなしや接待はある。だからその時に風呂を御馳走するのは最上級のおもてなしの一つだった……それは良く知ってる。けど、あたしは現代人! 接待待ちなんかしてないで毎日お風呂に入りたいのよっ!」
リサの言う通り。なので戦国時代に風呂――湯船に入れるのは大名……身分の高い者だけであり、庶民が湯船に入る事などまずありえないのである。(当時の庶民の風呂といえば蒸し風呂である)
そしてこの世界――文明、文化というよりやたらと戦国時代と同じ、酷似している部分がある。
リサも分類的には身分の低い者ではなく、家も金持ちに相当するが……やはり毎日風呂に入れるほどの境遇ではない様だ。
「そうだっ!」
突如としてリサがデスクに手をつき立ち上がると、部屋の中に居る――イザベラ、エミリア、アリベルと視線を巡らせ。
「ねぇ! 温泉てないの? 温泉があれば毎日じゃないけどちょくちょくお風呂入れんじゃん!」
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