歴女、初陣。

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 その光景をぼんやりと眺めていたリサは。 「何でワザワザ死地に飛び込むかな……? ありゃもう帰ってこれないわね?」  と洩らしたかと思うと、体ごとキリストへと向き直り。 「ま、何にしてもとりあえず助かったわ。そんで? あたしに話って何よ?」 「それなんですが――というより。お館様の方が僕に話があるからここへ来たんじゃないんですか?」  するとリサは両腕を組み眉間にシワを寄せ。 「いや、あたしはさぁあんたがあたしに訊きたい事があるんじゃないかなーと思って来たんだけど?」 「……?」  二人の要領を得ない会話に、酒が飲めない組に残ったジュリアスが困惑する。しかし―― 「はははっ。つまりお互い同じ事を考えていたワケですね。なら僕の方からお伺いしましょう。どうでしたかね今回のニークトーリ征伐は? 僕らしく勝てたと思うのですが?」  とキリストが問えば、リサはヒョイと肩を竦ませ。 「そうね。及第点ってところよ」 「あらら? その言い方だと合格こそすれ高い評価ではない様ですね? 何故ですか?」 「ん~……あたしも話は全部聞いて問題ない勝ち方をしてると思う。……けど、どうしても一つだけ許せない……って程じゃないけど減点対象があった」 「それは?」  ここでリサはキリストに見せつける様に人差し指をビシッと突き立てると。 「流石に一億は使い過ぎでしょっ!」 (や、やはり! 結果から見れば正解だったのかもしれないが……私も少々高過ぎなのでは? と思ったが……リサ様も同じ事を考えていたのか)  とジュリアスが考えていると、補足するかリサが続ける。 「あたしだったらもう少し安値で海の鷹を動かしてみせた。その交渉が――それこそが外交官の仕事でしょ?」  これがキリストを納得させる止めとなるかと思いきや、そこは百戦錬磨の少年。キリストは大口を開けて「ははは」と笑うと即座にこう答えた。 「如何にも名外交官である『お館様らしい』言葉です。しかしそこでお金に糸目を付けないのが『僕らしい』と思ったんですけどね? この戦いは『僕らしく』勝つ事が条件だったので」 「くぬぅ!」
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